ちの動物病院
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診療・治療例紹介

少しでも、検査の大切さや治療の流れを分かっていただき、
安心して診療を受けていただくために、
診療の流れの紹介を行っています。

1、咳が出る(大動脈閉鎖不全症と診断)
2、急に吐き出した(膵炎と診断)
3、皮膚にしこりができた(皮膚組織球種と診断)
4、耳をかゆがる(マラセチア外耳炎と診断)

5、耳を痒がる(その2)(外耳道炎症性ポリープと診断)
6、食欲が下がり、元気がない(クッシング症候群に付随した腸閉塞と診断)
7、元気がない(子宮蓄膿症と診断)
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1、咳が出る

<患者DATE>
犬、11歳、雌(不妊手術済み)

<来院のきっかけ>
最近、朝方に少し咳が出る

<診察>
聴診にて、異常な心音を聴取し、今回、年齢的なことを考えて、
「一度、しっかり心臓と呼吸器系を評価しましょう」ということになりました。

下図は心臓の超音波検査の所見です。



血液の流れに色を付けて、心臓内の血液の流れを観察しています。

この写真では、赤や青の色に混ざって、
黄色や緑色の血液の流れのスジがあります。

このような黄色や緑色のスジは血液の流れに異常があるときに出てきます。

この場合は、大動脈弁という心臓内の構造に問題があって、
血液の流れに異常をきたしていることが分かりました。

心臓から全身に血液を送る大動脈という血管の根元には、
大動脈弁という血液を一方向にしか流さないようにする構造があります。

そこに問題があり、血液が逆向きに流れてしまい、
心臓に負担がきていることが今回の咳の原因です。

幸い、その他、超音波検査において心臓の負担はまだ軽度であり、
血液検査、レントゲン検査、血圧、心電図においても
大きな問題はありませんでした。
(また、レントゲン上でもその他の呼吸器疾患等は否定されました)

<診断> 大動脈閉鎖不全症

そのため、早期治療によって、進行を防ぐという目的で、
投薬による治療を開始しました。

薬の作用としては、全身の循環のバランスを整え、
心臓の負担や悪化の進行を抑えることです。

現在、朝方の咳はたまにあるとのことですが、
咳の悪化は認められず、3か月毎に心臓の超音波検査をして経過観察中です。

現在まで進行はなく、元気にしっぽを振って来院しています。


 2、急に吐き出した

<患者DATE>
犬、12歳、雌(不妊手術済み)

<来院のきっかけ>
昨日まで何もなく元気にご飯食べていたが、
朝から急に吐き出した。
夜中からお腹がごろごろ鳴りだした。
朝ごはんを食べない。

<診察>
来院時、元気はあるが、背弯姿勢を示し、
聴診にて、腹部蠕動音の亢進を確認しました。
また、触診にて腹部の圧痛を示したため、
必要な検査についてご家族と相談し、
まずは血液検査とレントゲン検査を行うこととなりました。

レントゲン検査では大きな異常はありませんでしたが、
血液検査では消化器系の数値の乱れがあったため、
その後超音波検査を追加して行いました。

下図は超音波所見です。
十二指腸と膵臓を示しており、
膵臓が大きく腫れていて、
膵臓内に低エコー領域(黒い部分)を確認しました。


さらに、総胆管の拡張を認め、膵炎との関連が示唆されました。


その他の臓器には大きな異常はありませんでした。

さらに、膵炎の検出に利用されるマーカー(犬膵特異的リパーゼ)は
>1000μg/L(正常は≦200μg/L)と有意に上昇していました。

そのため、症状、血液検査、画像診断所見より、
膵炎と診断し、治療を開始しました。

<診断> 膵炎

ご家族との相談の結果、
通院にて食事と内服薬を主体とした治療を進めていくこととなりました。

治療開始3日後からは食欲もでてきて嘔吐もなく、
普通に戻ったとのことですが、
膵炎の再燃を防ぐため、
薬は徐々に減らしていき、
現在も3か月毎の経過観察を行っています。

下図が現在の膵臓の様子ですが、
膵臓の腫れが和らぎ、
少し黒い領域が小さくなったのが確認できます。


膵炎は再発する可能性があるため、
家庭でも注意深くわんちゃんをみていただき、
定期的に来院していただいています。
 3、皮膚にしこりができた

<患者DATA>
犬、8歳、雄(去勢済み)

<来院のきっかけ>
1か月前より背中にしこりができていて、治らない。

<診察>
しこりは赤く、ポリープのようで、
この1か月間で特に大きくなったりはしないが、
たまに出血することもあるとのことです。

皮膚にしこりができる原因はたくさんありますが、
まずは簡単な検査から始めましょうということで、
初診時にしこりの部分の細胞を顕微鏡で観察しました。



これが顕微鏡検査の所見です。
明らかな病原体の感染などはありませんでしたが、
細胞の形態が多様であり、2つの核をもつ細胞が多く認められました。

細胞の特徴やしこりの肉眼的特徴から良性の腫瘍も考えられましたが、
ご家族と相談し、
早期に切除を行うことになりました。

<手術>
手術はしこりをふくめて広めに切除し、
切除部位を病理組織学的検査に提出しました。

<病理診断>
皮膚組織球腫

<経過>
皮膚組織球種とは良性の腫瘍であり、
若いわんちゃん(1-2歳)に多くみられます。
今回は8歳での発症のため、
念のため切除しましたが、
良性とのことで一安心です。
現在まで再発なく、元気に過ごしています。
 4、耳をかゆがる
<患者DATA>
シーズー 雌(不妊済) 12歳

<来院のきっかけ>
1週間前より片方の耳をかゆがり、赤くなっている。

<診察>
左耳だけ赤くなり、全体的に耳垢が多く、耳道(耳の穴のこと)が肥厚していました。
外耳炎は見た目と経過である程度原因を判断することは可能ですが、
原因をはっきりとすることで、治療方針も明確になるため、
耳垢をとって顕微鏡検査を行いました。



これが耳垢の顕微鏡検査所見です。
雪だるまのような形をしたものがありますが、
これが、左耳の炎症の原因であることが分かりました。

<診断>
マラセチア外耳炎

<経過>
原因が分かったので、これに対する治療を行っていくことになりました。
最初は耳の洗浄と抗真菌剤の塗布から始めましたが、
経過が良いため、内服治療はしないで、少しずつ洗浄の回数を減らしていっています。
 5、耳をかゆがる(その2)
<患者DATA>
キャバリア、雌(不妊済み)、10歳

<来院のきっかけ>
右耳を痒がっていて、最近、膿のようなものが出てきた。

<診察>
キャバリアは外耳炎の好発犬種であるため、
まずは簡単な検査からしましょう、ということで、
耳鏡検査(耳の穴を覗くスコープのようなもので観察)と耳垢検査をしました。

右耳を耳鏡で観察すると、
鼓膜が見えず、大きな塊が耳の穴の中心にありました。
また、耳垢検査では複数の種類の細菌の感染があり、
この時点で典型的な外耳炎では無いと判断し、レントゲン検査を追加しました。

下図がレントゲン検査所見ですが、右の耳の穴が塞がっているのが確認できます。



身体検査、耳鏡検査、レントゲン検査等から周囲への波及はないと考えられましたが、耳垢腺癌など悪性の腫瘍の可能性もあるため、
早期の摘出手術を実施しました。

手術は全身麻酔下にて耳道切開を行い、
内部の腫瘤をできる限り広範囲にて切除しました。

摘出した腫瘤は病理組織学的検査に提出しました。



<診断>
炎症性ポリープ(良性)

<経過>
腫瘤の結果が良性だったため、
一安心ですが、良性でも再発なども見られることがあるため、
術後は定期的に耳道のチェックを行っています。
現在までのところ、再発はなく良好に経過しています。

下図が摘出後のレントゲン写真ですが、
耳道がきれいに開通していることを確認しました。



同じ耳のかゆみでもこのように手術が必要になることもあるため、
注意が必要です。
 6、食欲が下がり、元気がない
  (内分泌疾患に合併した腸閉塞・腸管切除端々吻合術)


<患者DATA>

マルチーズ 雌(不妊済み)、10歳


<来院のきっかけ>
おとといより食欲が少なく、元気がない気がする


<診察>
もともとクッシング症候群というホルモン疾患を抱えていたので、
その疾患が悪化した可能性を踏まえ、診察に臨みました。
しかし、身体検査で足の付け根(鼠径部)に膨らみがあり、
血液検査ではクッシング症候群の悪化所見がありません。
この時点で新たな病気の可能性が浮上しました。

下図が超音波検査所見です。



鼠径輪という足の付け根にある小さな穴大きくなり、そこから腸が飛び出しています。
鼠径ヘルニアに付随した腸閉塞です。
この画像では、体の中から体の外へ腸が飛び出して、皮膚の下に入り込んでる様子が分かります。
また、お腹の中の小腸が腸閉塞を起こしているため、膨らんで大きくなっています。

さらに、レントゲン検査で腹部の異常なガス貯留を確認しました。
腸閉塞では場合によってはお腹の中がガスでパンパンに膨れ上がることがあります。


<診断>
腸閉塞(鼠径ヘルニア、クッシング症候群に付随)

クッシング症候群では筋肉が衰えていきます。
そのため、もともとあったソケイ部の穴が大きくなり、今回の発症に至ったと考えられます。


<手術>
定法により下腹部を正中切開し、ヘルニア部を露出しました。

ヘルニア部周囲を丁寧に剥離し、内容物の確認とヘルニア輪の確認を行いました。

内容物は超音波検査で確認したとおり、腸管でしたが、黒く変色し、壊死が確認されました。
そのため、狭いヘルニア輪を拡大し、脱出した腸管を腹腔内に戻して、
壊死した腸管の切除と切った腸同士を繋げる腸管端々吻合術を行いました。

クッシング症候群では、傷の治りが極端に悪くなるため、
腸の切除と吻合には細心の注意が必要です。

そのため、マイクロサージェリー器具などを使用し、
吻合部を生体組織の一部を使って補強しました。

さらに、クッシング症候群では止血が十分にいかないことが多いため、
電気止血凝固器などをつかい、術中止血にも細心の注意を払います。



<経過>

クッシング症候群の内科管理と腸管端々吻合術の術後管理を同時並行して行いました。
腸管の手術では術後3−4日に縫合部から漏出など起こりやすいため、
特にその間は慎重に診ることが必要です。
幸い、術後すぐに元気を取り戻し、無事に退院しました。
外科疾患においても内科の知識は欠かせず、トータルで考えることが必要です。


また、嘔吐などがなく、単に元気がない、食べないということでも腸閉塞の可能性があるため、
しっかりとした身体検査が必要だと実感させられました。
 7、元気がない
<症例データ>
チワワ、雌、7歳

<来院のきっかけ>
もともと活発に遊ぶタイプだったが、なんとなく元気がないようにみえたので、
念のために来院したとのこと。


<診断経緯>
まずはお話を聞き身体検査をしていきました。
外陰部をみると、少しピンクがかったおりものがでており、
発情出血との関連を踏まえ、子宮卵巣疾患の可能性を念頭に置いて診療を進めていきました。
血液検査では白血球の上昇、血小板の減少、CRP>20と重度の炎症反応が確認されたため、
緊急で超音波検査を行いました。

<超音波画像>

カーソルで囲われた部分が子宮です。
子宮の内部に内部に膿汁用の物質がたまっており、
子宮蓄膿症と仮診断し、血液検査の所見から緊急性が高いと判断し、
その日のうちに緊急開腹手術を行いました。


<手術所見>
子宮の破裂が一か所認められたため、
慎重に子宮を腹腔外へ取り出し、切除しました。
また、汚染された腹腔内を滅菌生理食塩水にて何度も洗浄し、
その後閉腹しました。


<術後>
術後は入院し、持続点滴投与、抗生剤投与などにより、
順調に回復し、CRPや白血球の減少傾向の確認や食欲の増加の確認をもって、
7日目に退院しました。

<総括>
子宮破裂を起こすと、腹膜炎や敗血症をきたし、
手術を行っても生存率が極めて低くなることが多いのが現状です。
それでも、今回は早めに手術を実施できたことで
救命することができました。
今回のように「なんとなく元気がない」程度では来院することをためらうかもしれませんが、
来院の必要性については慎重な判断が必要だと感じました。